椎間板ヘルニア

 椎間板ヘルニアは椎間板が脊柱管内に変位することにより脊柱管内で硬膜・脊髄・神経根などを圧迫し疼痛・麻痺などを引き起こす疾患です。M.ダックス、フレンチブルドッグ、T.プードルなどにの犬種で発生が多く見られます。

 診断は身体検査・血液検査・レントゲン検査でおおよその見当をつけますが、それでも確実なことは言えません。下の写真は脊髄造影CT画像の横断面です。くも膜下腔内に造影剤を注入し、異常のない場所ではリング状に造影されます(左下)。異常のある場所では椎間板物質がくも膜下腔を圧迫するため造影剤が充填されず、画像では欠損して見えます(右下)。このようにCT検査もしくはMRI検査でないと椎間板ヘルニアの診断をつけることはできません。




















 治療は内科療法と外科療法があります。頚部椎間板ヘルニアでは治療効果を評価した報告は少ないですが、痛みのみの場合は内科的な治療でよいと思われますが、再発する場合、神経学的異常が認められる場合は外科的治療を行います。胸腰部椎間板ヘルニアでは治療効果を評価した報告も多くあり、両後肢歩行可能な場合は内科治療を、歩行不可能な場合は外科的治療を選択することが勧められています。

 

 内科的治療の主な目的は逸脱した椎間板物質が自然退縮するまでの期間、脊髄を保護して臨床症状を軽減することです。

①運動制限 4週間の運動制限。その後1か月かけて少しずつ運動量を戻す。脊椎固定用装具も役立つ。長期の使用は体幹筋が委縮するため勧め      られない。

②鎮痛管理 NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を使用する。
      以前はステロイドの使用が実施されていたが、現在は推奨されない。慢性例では使用することがある。
      NSAIDsの使用が困難な場合、効果が不十分な場合はガバペンチン、プレガバリン、トラマドールなどの鎮痛剤を追加する。
      ポリエチレングリコールは効果がないと報告されている。
      好中球エラスターゼ阻害剤のエビデンスはないが試験的に使用されている。

③膀胱管理 上位運動ニューロン性膀胱麻痺となり、自力での排尿が困難になります。1日3~4回の圧迫排尿、カテーテル管理、膀胱括約筋の      弛緩(フェノキシベンザミン、プラゾシン、ジアゼパム、ダントロレンナトリウムなど)で排尿をサポート。

④理学療法 神経機能改善の報告あり。

⑤鍼治療  エビデンスなし。

 

 外科的治療は脊椎骨を切削し、直接逸脱した椎間板物質を摘出したり、脊髄への減圧をするものです。逸脱している部位や方向により様々な手術を行っています。

 

 頚部腹側減圧術(ベントラルスポット)

 背側椎弓切除術(ドーサルラミネクトミー)

 片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)

 椎間板造窓(フェネストレーション)

 椎体固定術

 

 術後はすぐに回復するわけではなく数週間~数か月単位でリハビリが必要になります。

 

 重度の脊髄損傷の場合、脊髄の出血性壊死と液状化が生じ進行性脊髄軟化症(PMM)を生じることがあります。第5~6腰椎間であること、6歳令未満であることなどが発症リスクが高い要因となっています。フレンチブルドッグの発症が多いといわれています。
今のところ画像検査で確認する方法がなく、治療法もありません。




2025年11月19日